風を切るように走る。
握られているところがジンジン熱い。
胸がぎゅっとして、痛い。
しばらく走って、適当なところで立ち止まるとふたりとも膝に手をついて、あがった息を整える。
「あははは、くくく、あーおもしれぇー」
「は!?なにが!?」
「だって俺ら上履きのまま先生から逃げて来たんだぜ?あーうける」
……いやいや、全然面白くないんですけど。
もしかしたら停学、最悪退学になってもおかしくないのに。この能天気さにはほとほと呆れる。たぶん顔は見られていないから、大丈夫だと思うけれど……。
ため息を吐く私とは対照的にお腹を抱えて笑う彼をジト目で見た。目尻には涙までためている様子。ひとしきり笑い終えて満足したのか、その涙を人差し指で拭っている。
「……それでモナ」
「ん?」
「俺らこれからどうしようか?」
近くの自販機に金貨を入れながら夏希が私に問う。ガコンッと音を立てて出てきたミルクティーを自然に私に手渡してきて「あ、ありがとう……」と言った。
「今日はもう学校には戻らないっしょ」
「うん……」
あんなことがあってこれから再び学校に戻って真面目に授業を受けようとは到底思えない。
すると私の感情を読み取った夏希が「じゃあさ俺と旅しない?」と提案をしてきた。
……旅?
「俺、モナを連れて行きたいところがあるんだ」
ぎこちなく「わかった」と頷くと、夏希が再び私の手を握る。
今度は手首なんかじゃなくて、手のひらを直接。自分のではない彼の体温がダイレクトに伝わってくる。
「よし、行こう」
「うん」
引かれた手に素直に従った。
繋がれた手に不快感はまるでなかった。
見上げた空はとても青く、澄んでいた。