そしてそれはこれから先も塗り替わることはきっとない。



***



春の木漏れ日は眩しく、温かい。
桜の花びらは満開ではまだないけれど、蕾をつけて所々でピンク色をつけている。
色々あったけれど3年間通った学校も、今日で来るのが最後だと思うと感慨深い。


今日私たちは高校を卒業する。


胸につけた花をモチーフにした赤い胸章は、卒業生の証。もうすぐ式が始まるので、卒業生たちは入場の準備のために並んでいた。



「それにしても無事に全員合格できてよかったよね」



清水さんの言葉に深く頷いた。
私を含め、清水さんと水無瀬くん、そして桐生くんもまとめて同じ大学に進学が決まったのは本当に喜ばしいことだった。


これで春からも仲良しでいられる。


式は順調に執り行われた。吹奏楽のマーチに合わせて入場して、着席。校長先生の硬い挨拶と、卒業証書授与。そして祝辞や答辞といった風にありきたりな卒業式はあっという間に終わった。


泣いてる子たちもいたけれど、私は泣かなかった。


この学校での3年は本当に濃くて、思い返せばあっという間だったけれど、得たものもあれば失ったものも多い気がする。


でも確かに3年前の私よりかは大人になれた気がする。


なにも知らなかった15才の私。この世界には、どんなに強く願って想っても手に入らないものがあるのだと知った。


人生で初めてにして最大の恋をして、そして失った。上がっていた心の温度が下がって、落ち着いたのだと思う。


無垢のままに、心の赴くままに、恋をし続けていられない。好きで、いられない。


私はきっと物分かりのいい女の子すぎた。



教室に戻ってからは担任から熱い話があって解散となった。
もらった卒業アルバムの最後のページにある空白にみんながそれぞれメッセージを書きあった。


そんななか、このなかにはもう二度と会うもない人たちもいるのだろうなと呆然と考えていた私は他の子たちよりもやはり覚めている気がした。


心も、ひんやりとどこか冷たい。