背の高い桐生くんの顔を見上げる。
自然と上目遣いになってしまうのがわかる。


この大きな身体のなかにある私への気持ちがひしひしと伝わってくる。


だけど応えられない、今はまだ、全然。

応えられるようになるかも、わからない。
むしろ、可能性はゼロに等しい。



「わかった。待ってる」



正直、恋なんてもうしなくてもいいって思っているのだ。


でも、だけど、真っ直ぐな桐生くんの強い愛が凍りついている心にヒビを入れたようなそんな感覚。


まだまだ夏希が好き。好きで好きでたまらない。


ここからどれくらいの時間がかかるかはわからない。


一生かかっても夏希以外の人を好きになるなんて無理かもしれない。


それでもいいならどうか待っていてほしい。



***



今年も梅雨入りをした6月。
放課後になって清水さんとふたりで駅前のファミレスに寄った。
テスト期間中で部活がないからこうして放課後に彼女と寄り道するのは久しぶりだ。



「ねぇ、最近桐生くんと仲良いよね」

「ん?んー、そうかな?」

「……ズバリ、付き合ってるの?」

「付き合ってないよ!」



ドリンクバーのアイスティーにシロップを混ぜながら、笑って答える。
外は大粒の雨が降り注いでいて、カラフルな傘をさした人たちが続々と歩いていく。


かばんからノートと教科書を取り出した。
今日はテスト勉強をしようということになっている。


水無瀬くんも誘ったけど断られた。理由を言わなかったから、たぶん、夏希と会ってるんじゃないかと思っている。まあどうでもいいことだけど。



「そうなんだぁ」

「残念?」

「んー、ちょっとだけね」

「ふふ」



笑うと「モナちゃんには幸せになってほしいんだよ、友達として」と言われた。



「私も友達として、そろそろふたりにはくっついてほしいんだけど」

「ふ、ふたりって、誰と誰!?」

「……わかってるくせに」