こんなに弱い自分、大嫌いだ。
恋愛に頭も心も持っていかれて、友だちにも心配かけて、となりの席のやつからはすぐに元カレに未練があることを見抜かれて。
今年は3年生で、進路だって決めなきゃいけないのに。
「モナ?」
ああ、もう、どうしてこんな……。
「どうした?大丈夫か?」
こんなタイミングで君に会っちゃうんだろう。
廊下を突き進んでいた私の腕を掴み、引き止めたのは夏希。願っても、流していた涙をなかったことにはできない。
ここで君の胸に真っ直ぐ飛び込むことができたら、どんなにいいか。
愛しいのに。こんなに好きな気持ちでいっぱいなのに。
触れられているのに……ダメ、なんだ。
「……なんでもないよ」
「そんなことないだろ、泣いてるのに」
私の顔を覗き込むその大きな垂れた目。
そんなに優しくしないでよ。
頼むから。
私の腕から手を、離して……。
「悪りぃ」
その声とともに夏希の手から私の腕を引き剥がした力強い腕が後ろから伸びてきた。
「こいつ、もう俺のだから」
がっしりとした腕は次に私のことを引き寄せた。お腹に回された手。彼の身体のなかにすっぽりとおさまる。
桐生、くん……?
そしてそのまま私の手を引いて、走り去る。
後ろにいる夏希のほうへは振り向けなかった。
だから夏希がどんな顔をしていたかわからなかった。
そして私も、どんな顔をしているのかわからない。
ただ、心臓の音が全身に響いていることだけは確かだった。
たどり着いたのは誰もいない階段の脇。掃除用具が入っているロッカーがいくつも並んでいる。
すこし埃っぽいそこは若干薄暗く、荒れた息を整えるのにうってつけの場所とは思えない。



