それなのに、あれから4年も5年もここに居続けるのは、たまに嬉しいことがあるから。

辛いことの合間に、必ず少しだけ嬉しさを感じる瞬間がある。

それは、お客様から「頼ってもらえた」という実感が湧いたとき。

『ありがとう』

『さすが、水野さん』

何より一番に嬉しかったのは『やっぱり、あなたじゃなきゃ』

思い出すだけで、頬が緩む。

そう言ってもらえるまでに、私は2年ちょっとかかった。

だけど、辻さんなら、あっという間に信頼されてしまうんだろう。

ちょっと、悔しい。

そう思ったとき、辻さんの笑顔が、ふと浮かんだ。

『そんなに頼りないですか?俺』

『 そっ、そうです!俺が水野さんを守ります! 』

私だけに向けられた、特別に感じてしまう台詞ばかり。

他にも、辻さんの相手を気遣うためだけの台詞が、頭に次々と流れてきた。

相手を気遣えて、いつの間にか相手を頼りたくさせる。

──やっぱり、凄い人。