【水野さん視点】



辻さんが勢いよく飛び出して行った扉を、私は見つめていた。

それにしても、突然、一人でお得意先を回れだなんて、小岐須部長も酷だ。

辻さん、絶対に大変な思いをするだろう。

でも、よくよく考えてみれば、私のときもそうだった。

大卒でこの会社に、総合職として入社したのに、1年目から営業に配属された。

あまり大きい会社ではないことは、重々承知していたけれど。

しかも、一週間経った頃には、確かに私も単独行動を開始していた。

人見知りの私は、とても困ってしまって、5ヶ月もしたら、転職も考えていた。