山本くんが、俺の肩に手をのせる。



「そんなに喜んでるのなら、早く返事してあげないと。水野さんも、辻さんみたいな誤解してましたよ」

「俺みたいな?」

「そう。『気持ち悪がられたかも』って」

「そんな!思ったこともありませんけど!」

「はいはい。それなら、尚更、早く伝えないと『めちゃくちゃに愛してます』って」



「愛しています」なんて、いろいろすっ飛ばし過ぎて、照れるに決まっている。

聞いているだけでも、恥ずかしくなる言葉に顔が一気に熱くなる。

浮かれていると、山本くんの表情が、より真顔に戻った。

不思議に思ったが、よくよく考えると、当たり前のことだった。

今は、業務時間中だ。



「そんで、二人仲良くいつまで、お喋りしてんすか」

「あ……しまった、結構、時間経ってましたね。早く業務に戻らないと」

「俺はお客さんと打ち合わせがあるんで、もう出ますよ。何か俺に用があれば、携帯、ショートメールにお願いします」

「あ、はい。了解しました」



そう言って、山本くんは俺の前を通り過ぎると、中谷さんの前で立ち止まった。

中谷さんの耳元でコソッと、何かを言っているようだ。

すると、中谷さんは赤くなって怒り、山本くんは笑っている。