水野さんが俺との込み入った話を終え、事務所へ戻ってきたとき、そこには中谷さんと山本くんだけが残っていたそうだ。



『お疲れ様です、水野さん。辻さんと、どんな話をしていたんですかー?ねぇ、みず……水野さん?』

『お、お疲れ様』

『あれ?水野さん?ちょっと待ってください』



俯いたままでいる水野さんを不思議に思った、中谷さんが水野さんの肩に手を置くと、



『大丈夫ですか?』

『だ、大丈夫!なんていうか、辻さんに勢いで告白しちゃって…………でも、引かれちゃった。私、必死になり過ぎちゃってたかも。あはは……』



中谷さんは水野さんの背中をさすり、しばらく様子を見ていたらしい。

山本くんも、その状況を静かに見ていたとのことだ。





回想は、ここまで。

ここまでの内容を中谷さんから聞いても、俺は頭の上にはてなマークが浮き上がるばかりだ。



「え、俺、引いてなんかいませんよ。突然の愛の告白に、驚いて固まってしまいましたが……」

「それっすね」



少し遠くの方から、中谷さんとは違う低めの声が聞こえた。



「山本さん」

「それっすね。その辻さんの反応で、水野さんは一人で勝手に、盛大に勘違いしちゃったんすねぇ」