「とりあえず、俺の話を最後まで、落ち着いて聞いていてくださいよ」
念に念を押しておく。
そうでもしないと、また言葉を遮られかねない。
中谷さんの表情は、ますます不機嫌そうになっていく。
「言うなら、さっさと言ってください」
「水野さんに告白してもらったのは、本当です」
「いちいち、ニヤニヤしないでくださいよ」
「ちょ、もう、うるさいですよ。最後まで聞いてって、言ったじゃないですか。それで、告白されたことは事実です。でも、俺はフッていない!!」
「……………………間違いはありませんか?」
「間違いありません!」
中谷さんは疑いの目で、じっと見てくる。
俺が今、眉根を下げているのは、本心を表に出すために、演技をしているからだ。
おそらく、それに騙されてくれた中谷さんは、少し怯む。
弁解するなら、今のうちだ。
弁解するなら、余計なことは一切、言わなくていい。
「間違いなく、フッてなんかいない。だって……」
「だって……?」
先程までの勢いは無くなり、ようやく落ち着いて聞いてくれる。
ただ、目つきが未だに鋭い。
下から見上げられている形で、恐ろしいような、そうでもないような。



