中谷さんに廊下に、呼び出された。

事務所を出て、直ぐのところだ。

朝の出勤して直ぐのこの時間帯は、お掃除中の事務の人だとか、とにかく人の往来がそこそこある。

そんな人目にさらされたところで、何をされるのだろう。

そもそも、中谷さんと俺は、ほとんど接点が無い。



「あの……中谷さ──

「ちょっとぉ!」

「はいぃ!何でしょうっ」



なんでこんな凄い気迫でくるの?!

半分ビビりつつ、中谷さんがもう一歩、迫ってくる。

彼女はとても小柄で、身長はおそらく150cm前半と言ったところだろうか。

上目遣いで、俺を睨む。

今日は朝から、やたら呼び出しを喰らうこと多いなぁ、などと余所事を考えていると、不意を突かれた。



「辻さん!水野さんに何をしたんですか」

「へ……俺は、特に何も……」

「嘘をおっしゃい!」

「ええ?!」



責められている、その訳が分かっていない。

中谷さんも、かなり興奮している。



「ちょ、ちょっと、中谷さん?落ち着いてください」

「これが落ち着いていられますか!今日、辻さんが来たら、絶対に問い詰めてやろうと昨日の夜から、ずうっと考えていたんです!」

「問い詰めるって、何を……」

「だから!水野さんに何をしたんですかって、聞いてるんです。昨日、話があるって言って、水野さんをどこかへ連れていったでしょ?何をしたか、自分の胸に聞いてみたらどうですか」



そんなことを聞かれたって、何もしていない。

むしろ、俺が水野さんに告白された。

そして、逃げられた。

虚しすぎるだろ。