そんなことも知らない山本くんが、私を見た。

チラッと目が合う。



「熱……とかでは、なさそうですね」



そう呟いた山本くんに、辻さんが反応して、さっと立ち上がる。



「何でそんなの見ただけで、分からんでしょ!」



やっぱり辻さんって、すごい。

山本くんとタメ口で話している。

ビジネスとしては駄目なんだろうけど、環境と人間関係に対する順応性が高い。

いつの間にか、仲良くなってる。

私にとっては、ここがやっぱり辻さんの憧れるところ。

辻さんと山本くんに見とれていると、また山本くんと目があった。



「水野さんも大変ですね、鈍感な人が相手だと」

「えっ?」

「ちょっと山本さん!それ、どういう意味っすか!」



嘘。山本くんにまで、見抜かれてる?

どうしよう、いくら隠したところで、バレる人にはバレてるんだ。

これじゃあ、辻さんにバレちゃうのも、時間の問題だ。



「もう……どうしよう」

「え、水野さん?ちょっと2人とも、俺の分からんところで会話しないでくださいよ」



狼狽える辻さんを見て、あきちゃんは笑っていた。

それに対して、また辻さんは何かを言っている。

やっぱり辻さんって、いろんな方面から愛される人。