「それよりも、先程は失礼しました。相当、あの人のこと、嫌っているんですね」

「はい。あの人だけは、本当に駄目なんです。生理的に受け付けないというか……」

「そういうことなら、無理に関わらない方が良いですよ。田中さんの会社との取引も、俺を担当にしてもらえるように、部長に相談してみます」

「そんな、辻さん、そこまでしてもらわなくても。仕事は仕事。割り切りますから」

「本当に割り切れますか」

「…………大丈夫です」



明らかに、間があった。



「そんなに頼りないですか?俺」

「ち、違っ…そんなんじゃなくて」



俺に気を遣って、焦りだす水野さんに、俺は苦笑いをするしかなかった。

そもそも新人に顧客を、しかも新規のところを横取りされるのも、良い気分ではないだろう。

それは、わかっている。

それでも。