先程から水野さんのことを「彼女、彼女」などと言うから、俺の顔が熱くなって仕様がない。

第一、水野さんが気を悪くしているのではないか、と気が気ではないのだ。



「だーかーらー、大将!俺と水野さんはそんなんじゃ──



俺が言おうとしたとき、偶然他のカウンター席に座っているお客さんが、大将を呼ぶ声と重なった。

ちょいとごめんね、と言って注文を受けに行く大将に、軽い返事を返す。

結局、誤解を解くことが出来なかった。

俺と水野さんが、彼氏彼女の関係?

とんでもない!

願わくば、そうなりたいところだが、水野さんが俺をどう思っているかなんて、そんなことはわからない。

顔が非常に熱い。

真っ赤に染まっているであろう己の顔を隠すため、口元を手で覆いながら、肘をつく。

そして、そのまま水野さんを覗き見ようとしたとき、また彼女と目が合った。

すると、ふふっと微笑んでくれる。

その微笑に、また胸の辺りにある心が、可笑しな音を鳴らす。