それぞれ溜め込んでいた仕事の愚痴や、笑い話に花が咲き、どんどん空き缶が増えていく。



「水野さん。そのかぼちゃコロッケ、取って欲しいです」

「ちょっと待ってね」



皿にコロッケをよそい、中谷さんへ手渡す。

箸の持ち方すらも美しく、見惚れてしまう。

缶を口に付けたまま、ぼうっとする俺に気付いた水野さんが、顔を仄かに紅くして困っている。

何ですか、その反応。可愛いなぁ。

特に何を言うでもなく、彼女の反応を楽しんでいると、水野さんはおどつきながら、俺の空になっていた皿を指差し言った。



「つ、辻さんも何か、よそいましょうか?」

「じゃあ、お願いします」



俺から皿を受け取り、先程の反応とは結び付かないくらいに手際よく、よそってくれる。

俺のところに戻ってきた皿は、山盛りになっていた。



「こんなにいっぱい……ありがとうございます」

「いえいえ。辻さん、いっぱい食べますもんね」



照れ臭くて、頭を掻く。

すると、にやけている中谷さんの隣で、山本くんが呆れた表情でこちらを見ている。



「な、何ですか。じっとりと見て」

「や? お2人とも『夫婦』みたいだなって、思って。こう……なんて言うか、縁側でお茶してそうな、長年寄り添ったご夫婦の様な」

「その言われ方だと喜んでいいのか、複雑なんですが」

「……もう付き合っちゃえば良いのに」



山本くんの言葉に、思わず一瞬、呼吸をすることを忘れる。

水野さんと俺が既に付き合っている事実を知らないのは、この場では山本くんだけだから。