「もう少し先まで行ったら、手、繋いでもらえませんか」
一瞬、ぎょっとする辻さんに、少し傷付く。
もしかして駄目だったのかな、とおどおどしていると、辻さんは鞄を持ちかえ、私の手をぎゅっと捕まえた。
自分から催促したくせに、突然の辻さんの体温を感じ、一気に恥ずかしくなる。
「辻さ……」
こちらを見てくれないので、どんな顔でいるのか分からない。
しかし、よく見ると、耳が真っ赤になっていた。
その様子に私までつられて、顔が熱い。
すると、辻さんが真っ赤な顔で私を一瞥する。
「もう……俺、せっかく我慢してたのに」
「すみません……」
「さっきは、駄目って言ったじゃないですか」
「だ、駄目なんて、一言も……」
「もういいです。このまま、ずっと離しません」
辻さんの握る力が強まる。
思わず、握られた自分の手を見た。
──やっぱり、全然違う。
あの人のときは、痛いだけだったのに。
辻さんの手の力加減だって、確かに強いのに痛くない。
それどころか、胸が高鳴る。



