俺は、水野さんと奴の姿を見つけるなり、その店へ駆け込んだ。

水野さんが納得して、奴と一緒に居ようと思うはずが無い。

何かしらの理由があったとしても、彼女が奴と同じ空間に居ることが、平気な訳ないのだから。

入ったカフェの内装は、やはり真新しい。

すると、奥の方から若い女性店員が現れて、俺をたどたどしく接客してくれる。



「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか……」

「いえ。待ち合わせです」



そう言えば、すんなりと店内へ通された。

そうして、向かうところは決まっている。

窓際の席、だ。

外から見た窓際の、その席に水野さんの華奢な背中を見つけた。

その正面に座る奴は丁度、厭らしくニヤけているところだった。



「 水野さんっ……!」



すると、水野さんはもの凄い勢いで振り返る。

大きく目を見開き、既に頬には涙が伝っていた。



「……っ! 辻さ……」



反応はしてくれたものの、不自然な体勢のままで、その場から動こうとしない。

テーブルの上に置かれた腕は、奴によって固定されている。

この期に及んで、まだ懲りないのか。

怒りが沸々と込み上げてくる。

その上、気味が悪いと思うのは俺が現れても尚、水野さんだけに視線を合わせていて、一度も俺を見ないこと。

――こいつ。毎回、毎回わざとか?

あと一歩、距離を詰める。



「……あの、田中さん。離してもらえますか」



奴は思った通りに、無視を決め込む。

まるで、胃もたれするように不快感が押し寄せてきて、うんざりする。