翌日の通常業務は、俺を一気に現実へと引き戻す。

そうして、今日も1日が終わりかけていく。

休み明けの仕事は、どうも体がついて来てくれない。

溜め息を吐きながら、営業車を降りる。

会社の車庫から見上げた空は中途半端に落ちて、しかしながら、淡い青、紫、橙と色鮮やかで一瞬だけ目を奪われた。

そんな色を見せる空は、昨日の浜辺を思い出させる。

それにしても、本当に昨日のデートは、完全に浮かれていた。

俺という奴は、はじめてのデートで手を繋ぐのは、全然良いと思う。

だけど。

頭に、何度も浜辺でのキスシーンが蘇る。

映画のシーンの方ではなく、自分たちの情景が。



「朝はなんとか、挨拶出来たものの。どんな顔して会ったら良いんだよ……」



思い出すだけで、顔が異常に熱を帯びてくる。

その場で唸っていると、車のクラクションが聞こえた。

顔を上げると、中谷さんが戻ってきていた。



「ちょっと。そこ、ドア全開にされたままで居られると、駐車出来ないんですけど」



慌てて、そこを譲る。

中谷さんが車から降りたところで、挨拶をしてさっさと事務所へ戻ってしまおうと思った。



「お邪魔して、すみませんでした! お疲れ様です」

「お疲れ様です。本当ですよ。どうかしたんですか? こんなところで、物思いに耽って」

「い、いえ? 別に? いつも通りです」

「そんな風には、見えませんけど」

「何故、そう思うんです?」