何度か、電車を乗り継いだ。

その間、他愛も無い話をしたり、水野さんがウトウトしているのを横から眺めたり。

移動時間は、感じていた以上に長かったようだ。

1時間半もかかって到着した海浜公園は、良い具合に日が傾き出していた。

砂浜を目前にして昂る気持ちを抑え、先ほどお揃いにした白のサンダルに履き替えた。

足元の揃ったのを改めて確かめると、ふと水野さんと目が合う。



「自分から言っておいて、なんですがお揃いって、なんか恥ずかしいですね……」

「そうですか? 私はこういうの好きです、青春っぽくて」



彼女が青春なんて言葉を使って微笑むものだから、むず痒くなる。

青春を味わっても許されるのは、いくつまでなのだろう。

そして、その定義って一体何なんだ。

今まさに、青春の真っ只中に居て、本気で好きになった人の隣で過ごす夢のようなこの出来事に、更に酔わされてしまう。

およそ数年ぶりの波の音と、潮の香に誘われて、砂浜へと足を踏み入れる。

砂に沈む感覚が、妙に嬉しい。

懐かしく思える、学生時代の部活動の風景が思い浮かんでくる。

夕暮れ間近の海岸は、人もほとんど居なかった。

波が打ち寄せるのを近くで見られるところまで来て、思い出に浸っていると、後ろから普段の彼女ではあまり聞けないような、素っ頓狂な声がした。

そしてその後に、軽く背中に衝撃が来る。



「わぁ……!おっと、とと」



後ろをそっと振り返ると、水野さんが俺の背中に掴まって、鼻を擦っている。

堪らないほどに可愛らしく思えて、口角が自然と上がってしまう。

さらに微笑ましくて、ふっと息が漏れる。



「大丈夫ですか?」