1人で外回りをすることにも、そろそろ慣れてきた。

昼食を営業車の中で終え、昼一に約束している取引先へ向かっている最中だった。

その取引先とは、ストーカー野郎が居る、例のあそこだ。

何やら、また会社の方に問い合わせがあったらしい。

担当を自分から名乗り出てしまったのだから、俺が行く他ないのだが。



「たくっ。俺には『来てもらわなくて結構』なんて言い方したくせに……」



1人の車内では、一人言も溢れる。

奴は未だに、水野さんと会う機会を伺っているのか?

可哀想だが、不毛だとしか思えない。

水野さんの、あの反応を見たら、誰だってそう思うはずだ。

奴の顔が、頭に浮かぶ。

『あんた、いけ好かないわ──』

全く、腹立たしいったらない。

気持ちも不安定になってくる。

憂鬱だ。

しかし、これは自ら望んだこと。

水野さんを守りたいが為に、俺が自ら望んだことなのだから、しっかりしなければ。

それに今週の日曜日には、水野さんとのデートを控えている。

たった今は憂鬱だが、後にこれでもかという楽しみが控えていると思うと、多少の辛いことくらいは耐えられる。

勢いよく、深呼吸をした。



「よし……! 行くぞ、俺!」