歓迎会の翌日。

相変わらず、仲の良い賑やかなオフィス内のデスクに、水野さんの姿はなかった。



「小岐須部長。今日、水野さんは……」

「今日は休みだ」

「体調が優れない、とかですか」

「いや。代休だ。この前の休みに、出勤してくれていたからな」

「ああ…そういうことなんですね」



安堵して、息を吐き出す。

よかった。

昨夜の歓迎会でしつこく水野さんに付きまとってしまったことで「こいつ、初対面のくせに馴れ馴れしいな」などと嫌がられていないか、少し心配だったのだ。

今日の欠席は、俺のせいではないらしい。

そういうことなら、よかった、よかった。



「えっと……それでは、今日は俺、何をすれば……」

「山本についてもらおう」



すると、部長はある青年の方を向き、指名する。

「あきちゃん」こと中谷さんの、彼氏さん、山本くんだ。

程よい声量で返事をしている。

俺が山本くんの方に注目していると、彼がこちらに顔を向けた。



「見積書だけ作らせてください。したら、直ぐ行きましょう」

「山本さんのペースで構わないっすよ」



俺が気を遣ったにも関わらず、山本くんは数回キーボードを叩くと、コピー機へ。

席に戻った山本くんは、鞄を持ち上げる。



「さ、行きますかね」

「お…は、はい!お願いします」



俺も慌てて、荷物をまとめた。