お台場に着く前に、予約しておいたというレストランへ入る。

店の中はすでに混雑しており、入店時40分待ちと店員さんが話していたので、
人気店なのだろう。

観光地はおろか、有名店などにもうとく、まったく見当もつかないが、
そういった事に詳しい女子でも、満足するセレクトだろうと予想が付く。

予約されていた席に案内され、藤沢さんが自然に椅子を引いてくれる、
笑顔を向け、席に腰かけ周りを見渡す。

マダムと思わしき女性が多く、話し声は聞こえるが、
うるさいといった感じはない、
静かな音楽が流れ、ゆったりとした雰囲気にしてくれている。

藤沢さんはコースを勧めたが、前菜のサラダとパスタだけをオーダーした。

女性はデザートとか好きなのでは?と聞かれたが、
普段昼食はサンドイッチかおにぎりの為、それほど量が食べれないと答えた、
もちろんスイーツは大好きである。

「朝食は何食べているの?」

「野菜中心のスムージーとシリアルです」

車の中で、ほとんど話をしなかったのとは逆に、
レストランではほぼ話しどおしだった。

高校の時、藤沢さんはバスケットボールをしていて、私はバドミントン、
今日は、お台場だが、浅草や新宿、築地にも行ってみたいなど、

何気ない会話がずっと続く。

「このパスタ美味しかったです」

「手打ちでこだわっているからね。ほんとうにデザートとかいいの?
ここはケーキとかも美味しいよ」

「もう食べれません、次はケーキ目当てで来たいですね」

そういって、藤沢さんがデザートを口にするのを見る、
お皿の上に小さなケーキが2種類とアイスクリームが乗っている。

美味しそうと、少し羨ましくなりながらも、
どう考えても、これ以上食べれそうにはなかった。

「夕飯は普通に食べるんだよね?」

「そうですね、夕飯だけが、食事らしい食事かもしれません」

「少し安心した」

そういってデザートを食べながらコーヒーを飲んでいる。

そんな彼を見つめていると、ふと目が合った。

二人とも、びっくりしたような表情になり、微笑み合う。

「何?」

「美味しいですか?」

「もちろん」

なにげない会話がくすぐったく思える。

御曹司だから、何か特別な事があるかなと思っていたけど、
セレクトが少し上のランクなだけで、普通の男の子と変わらない。

そんな事を考えながら、会話に花を咲かせていた。