約束の土曜日。

11時に会社の最寄り駅で待ち合わせ。

18分前に電車が駅に着き、少し早いかなと駅の時計を確認しながら、
ロータリーへ向かう。

すると、白い車から、1人の男性が降りてくる。

「こっちだよ」

あわてて腕時計を確認するも、やっぱ18分前。

少し駆け足で車に近づき声をかける。

「お待たせしてしまいました?」

「いや、早く着いたんだ。さあ、乗って」

助手席を開け、待っていてくれる。

すみません、と言って車に乗り込む。

「観光でいいんだったよね」

「はい」

メールで、どこに行きたいと聞かれた時、
就職で東京に出てきたものの、仕事に慣れるのに忙しく、
どこがいいかまったく分からないと返信し、
それなら、定番スポットを巡ろう、という約束になったのだ。

「メイク変えた?」

余裕の表情で、ハンドルを切りながら話かけてくる。

「え?」

「雰囲気が違うっていうか、いつもにも増して女の子ぽいっというか・・・」

「分かります?」

「うん、かわいいよ」

確かに、いつもはしっかり赤を主張するリップに、茶色のアイシャドウ、
今日は、グロスを塗るだけで、ピンクのアイシャドウをしている。

しかも、さらりとかわいいって。

こうゆう所がもてるんだろうなと、ちらりと藤沢さんを見る。

そうゆう藤沢さんも相変わらずかっこいい、
ただ、私は声に出す勇気はなく、心の中でだけ再確認する。

「どこへ向かっているんですか?」

行き場所は当日のお楽しみになっていた。

「お台場だよ」

「パレットタウン、観覧車があるんだ、ショッピングもできるし、
東京ジョイポリスってジェットコースターが乗れる所もあるけど?」

「あ、ごめんなさい、ジェットコースターは無理で」

「分かった」

運転はあまり車に乗った事がない私でもわかる程上手で、
寝不足なら、すぐうとうとしてしまいそう。

「音楽かけよう、洋楽でいい?」

「はい、お願いします」

いたせりつくせり。

快適すぎて、申し訳ないというか。

その後は得に話すでもなく時間が流れ。

恋人の条件に、何もない時間が快適である事ってあった気がするけど、
こうゆう事なのかな?
ほぼ始めて会うのに、すごく自然というか、無理してないと言うか、
ただ、これも女慣れのゆえだったら複雑だな・・・

そんな事を考えながら、窓の景色を楽しんでいた。