相変わらず2人は早かった、2人というのは、お母さんと直哉さんである。

喫茶店で直哉さんが言っていたように、
結婚式場はいくつかピックアップされており、
いくつか質問の後、ここねと式場を決めてしまった。

細かい事は、コーディネートの人がサポートするとは言え、
お母さんと直哉さんが積極的に話を進めていく。

世間では、彼女が結婚式のプランを立て、
彼氏が手伝ってくれないと不満がありそうだが、
全く逆で、私はいくつか質問に答えるだけで、ほとんどお任せである。

直哉さんから、お母さんとは仲が悪いと聞かされていたが、
この家に来てから、そう感じた事は一度もないし、
結婚式の打ち合わせをする2人は、むしろ気が合っているように見える。

藤沢邸に来て3週間、仕事へ行き、週末には観光、食事は家で、という日常。

結婚式は5か月後と決まっていた。

ちなみに、直哉さんの部屋で眠るのが普通になり、
週4回ぐらいは体を重ねている。

問題は何もない。

ちゃんと、好きだと思ったし、

そう、問題はないはず。

ただ、あまりにもスピードが速く、
自分は日常をこなしているだけなのに、周りが目まぐるしく変わっていく。

直哉さんに預けていたおばあ様の指輪は、私の元に戻ってきて、
その時には、サイズも私のサイズに合わせてあった。

私のは、透明なダイヤだが、おばあ様のダイヤはピンクで、
当時からかなり貴重な物だと聞いていた。

2つの指輪を眺めて思う。

そう言えば、おばあ様の指輪をもらったのも、この家に来てすぐ、
かなり早かったような・・・

何となく、違和感を覚える。

京子さんにラインをすると、休みなのかすぐ返事が返ってきた。

『当然逃がしたくないわよ、直哉さんの恋のかけひきにはまっているのね』

とかえってきた、

恋のかけひき?

私はかけひきなんて少しもしていない、

直哉さんが、私にかけひきをしているの?

逃がしたくないって・・・

前も、よく分からない事があったが、京子さんの分析は当たっていた、

多分今回も、私がにぶいだけで、京子さんが正しいのだろう。

『直哉さんにとって、万里ちゃん以上の女の子なんて、絶対ないって事よ』

ありがとうと返事をして、ラインを終わらせる。

今まで別れた15人の彼女と何があったんだろう。

過去を気にするタイプではないし、まったく聞いた事もなかったが、
少し気になってしまった。