そして、再び冬が訪れて、佐奈は19歳の誕生日を迎えた。
“どこに行きたい?”
“ネズミーランド!”
そんなリクエストに応えて、佐奈を人気キャラクターのいる遊園地へと連れて行ったのだけど。
『佐奈そろそろ休憩しようよ』
佐奈は子供のようにはしゃぎながら、夢中であちこちのアトラクションへと走り出す。
コーヒーカップだのメリーゴーランドだのクルクル回されて、さすがに俺もダウン寸前になっていた。
『うん。じゃあ、少し休憩したら、あのジェットコースターに乗ってもいい?』
『え……。佐奈…あれ乗りたいの?』
『うん。楽しそうだよ』
佐奈はニコニコと笑いながら、90度に落ちていくコースターを見上げていた。
マジか……。
思わず苦笑い。
『佐奈ちゃん。ああいうのは……ちょっとさ』
『怖いの? 圭吾』
ベンチに座る俺の顔を覗き込む佐奈。
『いや…怖いって…いうか』
『分かった。じゃあ、圭吾はここで待っててね。私、一人で乗ってくるから』
俺にそう言うと、佐奈は勢いよくジェットコースターに向かって走り出して行った。
『おい、佐奈!』
追いかけようとして立ち上がるも、フラッと目まいに襲われて、俺は再びベンチへと座り込んだ。
まあ、ここで見てれば大丈夫だろう。
ジェットコースターの列に並らんだ佐奈を見つめながら、しばらく俺は休むことにした。
すると、
佐奈の前に並んでいた若い男三人が、佐奈に声をかけてきた。
恐らく、自分たちは奇数だから一緒に乗らないかと誘っているのだろう。
佐奈がにこりと頷くと、男達はガッツポーズをしながら三人でジャンケンを始めた。
あいつら、ぶざけんな!
俺はスクッと立ち上がり、佐奈の元へと走った。
そして、
『お待たせ。佐奈。ごめんな。先に並ばせちゃって』
俺は佐奈の肩を抱き寄せながら、男達をジロリと睨んだ。
すると、彼らは気まずそうな顔をして、そのまま前を向いてしまった。
佐奈だけは、キョトンとした顔で俺を見ていたけれど。
そして、そんな無茶をした俺は、当然のごとく、トイレで二回も吐き、佐奈に情けない姿を見せる嵌めとなった。
『も~何で乗っちゃったの?』
『仕方ないだろ? 佐奈が変なナンパに引っかかるから』
『ナンパ? そんなのされてないよ。一緒に乗ろうって言われただけだよ』
『だから、それ、ナンパだろ? あ~もう、とにかく今度からは声かけられても無視しろよ。笑うな。着いていくな。分かった?』
『う、うん。分かったけど』
と、大人の余裕なんて吹き飛んで、俺は6つも年下の佐奈相手にヤキモチを妬きまくっていたのだった。



