それでもあなたを愛してる


そして、
いよいよ婚約パーティーの日を迎えた。

会場となっているサクラージュホテルには、200名近くの招待客が集まっていた。

でも、その大半は父や西島さんの仕事関係の人達。

今日のパーティーは、西島さんが父の後継者となることを正式に公表する場でもあるからだ。


そんな中、ちょっとしたアクシデントがおきていた。

西島さんが控え室に持ち込んでいた婚約指輪が、ジュエリーケースごと消えてしまったのだ。

実はパーティーの中で、西島さんが私にプロポーズして指輪を嵌めるという演出が用意されていたのだけど。

「仕方ないな。演出は中止しよう」

西島さんがホテルスタッフにそう指示した。

「はい。ですが、演出を中止しても、佐奈様の指に指輪がないのはマズいかと。ダミーでも手配しましょう」

「手配にどのくらいかかる?」

「30分程頂ければ」

「いや…そこまで遅らせられないな。あっ、じゃあ、君のでいいよ。彼女に貸してくれない?」

西島さんがホテルスタッフのしている指輪をさした。

「いえ。私のサイズでは佐奈様には大きすぎます」

「そうか…困ったな」

控え室前の廊下で頭を抱える二人。
そんな二人の横で、私はオロオロとするばかりだった。



「あの、もし宜しければ、私の指輪を使って下さい」

そう言って声をかけてきたのは、父を病院から連れて来てくれた七菜さんだった。

彼女は圭吾の仕事が軌道に乗るまでは、日本に残って父の秘書を続けることにしたそうだけど。

「いえ…結構です。指輪のサイズだって合わないと思いますし」

とにかく、私は、圭吾が七菜さんに贈った指輪なんてつけたくなかったのだ。

けれど、

「指輪のサイズでしたら、私もお嬢様と同じ7号ですよ」

七菜さんは指輪を外し、「どうぞ」と差し出してきた。

「いえ、でも……」

躊躇う私に七菜さんはこう言った。

「お嬢様。社長もお嬢様達が遅いので、何かあったのかと心配しておられます。お気持ちはお察し致しますが、ここは社長の為にも」

そんな風に言われてしまったら、つけない訳にはいかなくなる。

私だって、これ以上父に心配なんてかけたくない。

「分かりました。お借りします」

私は七菜さんから指輪を受け取り、左手の薬指へと嵌めた。

サイズは確かにピッタリだった。

「ありがとうございます。それじゃ、佐奈ちゃん。行こうか」

西島さんは七菜さんに一礼すると、私の肩を引き寄せて歩き出した。

「ごめんね。佐奈ちゃん。こんな思いさせて」

「いえ。大丈夫です。これくらいのこと。それに西島さんのせいじゃありません」

「佐奈ちゃん、強くなったよね」

「そうですか?」

「うん…。逞しくなった」

そんな会話を交わしながら、私達はパーティー会場へと急いだのだった。