「あの、柏木楓さん」
楓さんの目の前まで行き、声をかけると
自力で立てるまで回復したようで、警察官は俺に気を利かせ2人きりにしてくれた
「え、っと、君はさっきの」
「はい、桜咲です」
「ああ、やっぱり桜咲か」
やっぱりか、まあみんな気づいてるよな
目の前の桜咲に驚きつつ笑みを浮かべる楓さんに、どうしても
「奏…」
カナが重なった
「っ!?、どうして…?」
奏という名前に反応し、尋ねてきた
「俺、奏と友達で」
「っ、そうか…奏は今どうしてるかな」
懐かしむように、優しく微笑む楓さん
カナ、カナは愛されてるよ
だから早く会って、抱きしめてもらって
温もりを、愛情をもらってね
「奏は、素直で優しくて元気ですよ
周りの人たちを支えられる強い奴です」
今日出逢ったばかりの俺に、1番話しかけ、最初に安心をくれた奏
たった1日のあの数時間でもわかるくらい、奏は今言った通りのやつだった
そう伝えたかったこと伝えると、
「そ、うか…よかった」
薄ら涙を目に浮かべる楓さんに、少しもらい泣きしそうになる
「奥さんも、元気です」
「っ、優美っ」
優美さん…楓さんの奥さんも元気に奏と仲良く暮らしている
理由も知らず出ていった楓さんを待ちながら
「宿は警察が用意しているので、そこでゆっくり休んで、心の準備が出来たら、一刻も早く2人に会いに行って抱きしめてあげてください」
カナ、頑張って
恨まないで
楓さんはこんなにも2人を愛してるから