彼女と同棲中の男、しかも収入もない、年上の不潔で寄生虫みたいな人。
ぐっと体の芯から強い欲望が湧き上がってくるのを感じ、無意識に彼の後頭部を押さえつけ再び唇を合わせた。
何も考える暇なく、あたしの舌は勝手に動いて、これが性欲なのかと思い知る。
「……君、どういうつもりなの?」
低い声。
怒っているだろうか。
あたしのしたことは痴漢と何ら変わりない。むしろそれ以上かもしれない。
「あたしたち、似てるんだよね」
「は?」
「昨日は分からなかったけど、今分かった」
「……」
「逃げようよ、この家から、あの人から」
今分かった。
あの女の人を、この人が縛り付けているわけではない。
この人が縛り付けられている。
不健康そうな彼の白い首に、あの彼女の病的に細い腕が絡まるのを想像して、そっとその首に触れた。
「逃げないの?」
「……逃げれない」
あたしの奇行に驚いたまま、呆然としているレオさんは、ぽろりと本音をこぼすように呟く。
なんて可哀そうな人なんでしょう。と、思った。
まるで物語のナレーションのように、この人への感情と、この人が胸に抱いている葛藤を理解できた。

