「なん……」
レオさんは煩わしそうにあたしの手を払ったし、その瞳もぎゅっと細められ、眉間には皺が寄っていた。
あ、起きる前に前髪をピンで留めておけばよかったのか。と気づいたけど、もう遅い。
レオさんは起き上がり、前髪は通常通り目にかかったままであたしが見たいものは見られなかった。
「……あれ、……なんだここ」
「こっちのセリフなんですけど」
「……」
レオさんはいまいち状況が把握できていないのか、まだ酔っているのか、具合が悪いのか、まだお酒の経験がないあたしには分からない。
ぼーっと天井を仰いでいたかと思えば、ゆっくりとあたしの方へ首をもたげ、怪訝そうに口を歪めた。
「……隣の……」
「穂波です、前にも自己紹介したけど」
「……んあー、……覚えてるよ。大学生のね……」
ほんとかな。レオさんは気だるげに数回頷くように首を振ったけど、その反動で頭を壁にぶつけた。ごんて音が鳴る。痛そう。

