隣人はヒモである【完】



酔っている? まさか、あたしと秋元さんを間違えているということはない?


いやいや、朝10時だぞ? 朝10時に酔っぱらう大人がいる? しかも平日に。


いや、いるのか。こういう人種はところ構わず、いつであろうと自分の好きなように生きているのか。


それって少し羨ましくもあるし、自分はこの人よりましだと思えて安心できたりもする。



「酔ってるんですか」

「酔っていない」

「じゃあここで、何を」



尋ねたけど、レオさんはくくくとのどの奥で笑っているばかりで、あたしの問いには答えない。


かと思えば、ばたんと音を立て、いきなり玄関で倒れた。



「えっちょ、え……?」



さすがのあたしも焦り、慌ててレオさんの体を揺すったり呼吸を確認したりしたけど、どうやら見るに眠ってしまったらしい。


……ほんとにただ酔っぱらって寝てるだけ。


酔い潰れて、あたしんちを自分ちと間違えたんだ。


そうだとすれば、ピンポンを押したものの酔いの回った体で立っていることが出来ず覗き穴の死角で扉にもたれていたということか?


それで出てきたのがあの人、秋元さんでなくあたしだったから、まさか強盗か何かと勘違いして襲い掛かってきた?


そこまで推理して、なんて迷惑な男なんだと呆れた。


まだ面識のあるあたしだったからよかったものの、もし反対隣や、階を間違えていたなら通報されていたっておかしくない所業だ。信じられない。