隣人はヒモである【完】



あの人なんじゃないか、ていうか、あの人だ。あの人しかいない。


何故かそう思う。あの男が押した。あの男に決まってる。またあたしを訪ねてきた。


なんの証拠もないのにそう確信して、殆ど無意識にドアノブを回していた。


瞬間、ほんの少しドアを押しただけにも関わらず勢いよく扉が開き、バランスを崩したあたしは裸足のまま外に飛び出しそうになる。



「うっ」



かと思えば、突如首元を冷たいものが圧迫した。


痛い。何か刺さった? 苦しい。首が締まる。息できない。


あまりに一瞬のできごとに理解が追い付かないまま、外へ飛び出したと思ったあたしの体は家の中へ逆戻り、押し倒されるような形で玄関に尻もちをついて倒れ込んだ。


その衝撃で首元の圧迫は外れたけど、今度はお尻に激痛。痛い。



「なっ、」

「……よう」

「にを、……っなにを、……⁉」

「静かに」

「んぐ」



予想した通り、レオさんは無様に狭い玄関に横たわるあたしの口を大きい手で塞ぐと、これまた長い腕を伸ばして背後のカギを器用にも回した。


かちゃりと音を立てて鍵が締まる。


いやどういう状況? ていうか息できないから。