───ドンドンっ
「開けろっ!由紀恵!」
俊哉の声に隣の部屋から幾太が出てきた。
「んもー、由紀恵さーん。この人うるさいからドア開けて~」
「幾太、お前は黙ってろっ!ねぇ、由紀恵ちゃ~ん。お願い、開けてっ」
幾太の隣の部屋のドアが空き、勇気が顔を覗かせた。
「幾太さん、今度は何?」
「いや、トシさんがプリンを二つとも食っちまったらしくて。何か由紀恵さんが一時間並んで買ったらしいんだよね」
「…くだらねぇ」
「あ?勇気、何か言ったか?」
「いや、空耳ですよー。じゃあ、明日並んでトシさん買ってくればいいんじゃ?」
「明日は定休日なんだ。しかも今月の期間限定で、明後日には月が変わるから手に入らない…」
「あー、それ重罪ですね。俺でも食われたらキレるかも」
さらに肩を落とし、ドアにすがり付いて
「──ゆきちゃん、帰って来て…」
と俊哉が弱々しく呼び掛けた時、勢いよく由紀恵が籠城している部屋のドアが開いた。