「……やっぱり引っ越そうかな」と俊哉が呟いた。
「は?何を今さら…」
「いや、だって。二人だとこうやって周りを気にすることなくできるだろ?」
と、由紀恵から取り上げた飲みかけのシャンパングラスをサイドテーブルに置いて、口付けてきた。
「でも、俊哉が言ったんじゃない。しかももう改築も済んだし、ある意味新居でしょ?しかも土日はあの二人はほぼ家にいないし」
「じゃあ、一週間分宜しくお願いしますっ」
と、俊哉が由紀恵の上に乗ってきた。
「えっ、ちょっ、無理無理~っ」
由紀恵がジタバタ足掻いていると、ガシッと両腕を掴まれ暖かい口付けに包まれた。身体全てが暖かさに包まれたような優しいキスに、この時がいつまでも続きますようにと願った。
長い口付けのあと、俊哉が体を起こし『あっ』というので、由紀恵が小首を傾げて見つめ返すと
「もう、鳩尾はやめてくれよ。あれは本気で殺意を覚える」
と真顔で言ってくる。
「じゃあ、殺られる前に殺るわ」と微笑み返した。
「まぁ、お前なら本望だ」
と、また優しい口付けを落としてきた。