「すみません、支部長。由紀恵がお邪魔して」

「いや、俺はいいんだけどね。ちゃんと彼女を納得させてから、持って帰ってね」

「たっくん、由紀恵は物じゃないよ」

「あ、ごめん、ゆうたん」

「う、ゆぅ……」

まあ、俊哉にも衝撃的だったらしい。と、彼に同感してる場合じゃなかった。

「私は帰りません。荷物もアパートが見つかれば取りに行きますから」

「由紀恵…」

「あら、さん付けで呼ぶんじゃないんですか?あぁ、優さんの前だけでしたか。私の存在なんか知られたくないですもんね」

「だから、そんなつもりじゃ─」

「まぁまぁ、蒔田さん好きなだけ家に居るといいよ。長谷川くんは一旦退散するとしよう。送るよ」

いつまでも平行線を辿りそうな話し合いを打ち切って、桜井支部長と俊哉はドアの向こうに消えていった。

「結実ちゃん、ごめんね。アパート直ぐ探すから」

「気にしないでください。面白い展開になってきたので」

「は?」

「いやいや、こっちの話です。たっくんもああ言ってるし、ゆっくりしてください」

結実のにやけ顔にヒクッとしながらも、『お願いします』と軽く頭を下げた。