───しまった。

由紀恵は重大なミスを犯した。

あまりにも慌てて風呂場へと行ったため、着替えを持ってくるのを忘れてしまったのだ。

バスタオルを体に巻き付け、そっと脱衣所のドアを開け、廊下の様子を伺う。

脱衣所からすぐに俊哉の部屋。そこさえクリアすれば自室だ。テレビの音声が聞こえるし、まだ俊哉はリビングだろう。と由紀恵がダッシュしたとたん、

─ガチャ。
「うわぁ!」「キャー」


廊下に倒れた俊哉の上に、バスタオル一枚の由紀恵が乗っかっていた。

「ど、どうしたの?」と俊哉が壁にふっと顔を向けて聞いてきた。

「ちょっと、着替えを忘れちゃって……」

すると、ふっと俊哉が笑い

「そんな緊張してたの?」と聞いてきた。

何だかその余裕な態度にカチンと来た由紀恵は、ガバっと体を起こして

「普通に緊張するでしょ!この状況!」と俊哉を睨むと、由紀恵を見る顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。

「へ?」と由紀恵が目線を自分へと落とすと、バスタオルがずり落ち、胸が露になっていた。

バッとバスタオルを掻き抱き、自室へと駆け込み勢いよくドアを閉めた。