結局最後まで騒がしかった夕食を終え、皆リビングでまったりしていると、

「由紀恵、ちょっと…」

(えっ?いきなり呼び捨てっ!)

「早く」という俊哉の耳は赤くて…由紀恵はにやけながら、「はい」と言って自室へと向かう俊哉の後をついていった。
背後からは「声は押さえてくださいねー」と言うかなえさんに俊哉がすぐさま

「ご期待に添えなくて残念だけど、ちょっと話するだけだからっ」

というその赤い顔に、ますます口角が上がる由紀恵だった。

部屋に入ると俊哉が「明日、予定ある?」と言うので、首を横に振ると「じゃあ、行きたいとこある?」と聞いてきた。その隙にベッドに腰掛けた俊哉の足の間にすっぽりと体が収められてしまった。

「ちょっとこれ恥ずかしい…」と俯くと、「その顔が見たいからやってる。向こうで出来ないだろ?」と耳許で囁かれた。

「ひゃっ、だから耳はっっ」と俊哉から離れようとするがしっかりホールドされて逃げられない。

「やめて、…あっ」

すると耳やら首やらに容赦なく俊哉が口づけながら「どこ行く?行くとこ決めるまでやめないよ?」というので、うまく思考がまわらない中「ゆ、…遊園地!」と叫んだ。

ピタッと俊哉の動きが止まる。「あ、いや、トシさんがそんなことするからっ、この歳でさすがに遊園地とかはっ」
という由紀恵の言葉を遮るように、

「俊哉…」
「え?」
「トシさんじゃなくて、俊哉。」
「……俊哉」

すると、視界が反転して二人で向かい合ってベッドに倒れ込んだ。

「ちょっ、皆いるからっ!」
「明日、遊園地な。楽しみにしてる。」

「……うん。」

とその日は長いキスだけして、お互いの部屋で眠りについた。