「じゃあ、俺の機嫌直してくれる?」
「え……、どうすれば……?」

「取り敢えず、キスしてもらおうかな?」
「えぇ、いや、はい……」

「ほら、早く。んー。」
「……」

あと1センチという時、

「なにしてんの?」

「「うわぁっ」」

ドタっと俊哉はリビングのソファから転げ落ちた。

「か、かなえさん…おかえりなさいっ」

由紀恵が慌てて取り繕うと、

「トシさん、いちゃつくんなら部屋でやってよねぇ。ここは共・有・スペース!」
「「すみません」」

あれ?と由紀恵は少し疑問に思ったが、取り敢えず、謝るとかなえさんは自室へと消えていった。

「チッ」と舌打ちをしてトシさんは立ち上がり、私に向け手を差し出した。

「ん?」と首をかしげると、

「部屋いこう?」
「えっ、いや、ちょっとまだっ」

「返事もらって直ぐにそんな事しないよ。ちょっとゆっくり話したいだけなんだけど。」

早とちりに恥ずかしくなり俯くと、さっと手を握られ、とぼとぼとトシさんの後へついていった。