「上手くなってきたね」

北本先輩がボールを投げて戻ってきた私に言う。

初めの一本を倒して以来、ガーターと言うに溝掃除に徹していた私だけど、ここに来て真っ直ぐに進むようになっていた。

ボテ・・・ゴロゴロゴロ・・・と言うスタイルは変わってないけど。

ピンを倒せるようにはなった。


北本先輩は、順調にストライクやスペアーを取りまくってたけどね。


「なんとか、真っ直ぐに投げられる用になりました」

そう返して、ほっと息をつく。

ボールを放り投げ慣れてないせいなのか、少し右腕に違和感はあるものの、楽しめている。


「もう一試合する?」

と聞かれ、

「やります」

と答える。

せっかくコツを掴んだから、もう少しやってみたいんだもん。


「よし。じゃあ、水分補給して再開しよ。飲み物買ってくるから待っててね」

北本先輩はパネルを操作し終えると立ち上がった。


「私、行ってきますよ」

「いいのいいの、座ってて」

立ち上がろうとした私の肩を押し戻して笑った北本先輩。

何から何まで北本先輩に任せてしまってる事に申し訳ない気持ちになりながらも、颯爽と去っていく北本先輩の背中を見送った。


ほっと息をついて、楽しそうにボーリングをする周囲へと目を向ける。

かなり賑やかなそこは、若者で溢れてる。

思い思いにゲームをする人達。


青春てこう言うのをいうのかな、なんて思いながらぼんやりとしていた私に聞き覚えのない声がかかった。


「ちょっと、貴女」

見上げたそこには、派手な化粧の女性がいて、私に向かって嫌悪を露にしていた。

だ、誰?

見覚えのないその人に首をかしげる。


大学生には見えないから、年上なのだろうと思うけど、私の記憶の中にはこんな人いない。

長い黒髪に口元に塗られた赤いルージュ。

目尻のつり上がった彼女は、多分美人。


「・・・だれ?」

この質問で間違いないと思う。


「倫太郎と一緒にいたけど、どういう関係よ」

「・・・・・」

面倒臭い、北本先輩関係だ。

辟易して、溜め息を漏らす。


「最近、連絡しても通じないと思ったら、こんなお子様と遊んでたのね」

バカにしたように私を見下ろすその人に、感情のない瞳を向ける。

見知らぬ人にバカにされるのは、いい加減ムカつくもん。


瓶底眼鏡で武装していた時は、バカにされてもなんとも思わなかったけど、今はそうじゃないから。