ボールは北本先輩が私に合う重さの物を選んでくれた。

三つの穴の空いたグリーンのボールは私の手にしっくり来た。

北本先輩は、かなり重いボールを選んでいて、片手でそれを持つと腕の筋肉が綺麗に浮き出た。



「俺からやってみるね」

こちらを振り返って、前髪をかき揚げて前髪をかきあげる仕草にドキッとした。


「はい」

「こんな風に持って、レーンのギリギリの所で真っ直ぐ押し出すように、勢いよくボールを転がすんだ。こんな風に」

北本先輩が説明しながら、ボールを投げると音を立てながら10本並んだピンの中央へと勢いよく転がっていった。

派手な音を立てて、ピンが弾かれる。


ストライク! とモニターに派手な表示が現れた。


「わぁ、凄いですね」

手を叩いてはしゃいだ私に、北本先輩はヘラりと笑って両手を上げた。

これって、ハイタッチするって、事かな?


遠慮がちに両手を伸ばして、北本先輩の掌にタッチする。


「一回目でカッコいいところ見せられて良かった」

ほっとしたように言う北本先輩に、

「自分で言っちゃうんですね」

と笑う。

確かにカッコいいけど、自分で言っちゃう辺りが北本先輩だ。


「うん。千尋ちゃんにはカッコいいところ沢山見せたいし」

ウインクした北本先輩に、こちらを見ていた女の子たちがキャッキャと騒いでる。

本当、どこにいてもモテモテですね。

モヤモヤした何かが、胸の中で湧いた。


「北本先輩って、ブレませんね」

肩を竦めて笑った私に、

「それが俺だからね」

と笑う。


「次は千尋ちゃんね。ボールを持って、よく狙うんだよ」

北本先輩に急かされるようにしてボールを掴むと、これが以外に重くて。

もう片方の手でしっかりと支えながらレーンの前に立った。


北本先輩の見よう見まねで、腕を振りかぶってボールを投げるも、ボトッと鈍い音がしてスピードも乗らずにボールは転がっていった。

溝ギリギリを通り、ピンを一本だけ倒して投げたボールは奥へと吸い込まれていく。


「難しいですね。上手く転がらないし」

北本先輩みたいに勢いよく転がらなかったことに、落胆して振り返った。


「初めてだから仕方ないよ。やってるうちに慣れてくるよ」

少し落ち込んだ私の頭を北本先輩はポンポンと撫でた。


北本先輩は、私と入れ替わるようにして自分のボールを持つと、綺麗なフォームでボールを投げる。

再びボールは中央へと勢いよく向かい全てのピンを弾き飛ばした。