「それに千尋は凄くいい子だもの。自信をもって欲しいわ」

「紀伊ちゃん・・・」

紀伊ちゃんの言葉に胸が熱くなる。


「私の自慢の親友は自分に自信が無さすぎるのよ」

つんと人差し指で額をつかれた。


「・・・痛いよ」

本当は痛くなんて無かったけど、涙か滲んだ言い分けにした。


「何度も言うけど、千尋の相手が北本先輩っての、ほっと~に不本意だけど・・・千尋があれを好きなら100歩譲るわ」

嫌そうに顔を歪めてから溜め息をついて、そして笑った紀伊ちゃんは、いつも私を思ってくれる一番の親友だ。


「ん・・・考える。自分がどうしたいのか。胸の奥に芽生えた気持ちが何なのかを」

今の私にはまだ恋なのか分からないけど、一から始めるのも悪くないと思えるから。


「しっかりと相手を見極めて、自分の気持ちに素直になればいいのよ」

やっぱり悔しいわね・・・悪態をくつのは止められないらしい。

紀伊ちゃんは、本当にいつだって私を支えてくれる。


「ありがと、紀伊ちゃん」

「お礼なんて言わないでよ。ほら、千尋もお風呂に入っちゃいなさい」

照れ臭そうに言う紀伊ちゃんに頷いて、私はお風呂へと向かった。


















「久し振り、千尋ちゃん」

カテキョにやって来た私を玄関先で迎え入れたのは、満面の笑みの北本先輩。


「久し振りって、お昼に大学で会いましたよね?」

呆れたように言えば、

「数時間ぶりだから、つい」

悪びれる様子もなく言う。


「もう、お兄ちゃん、先生を早く家に入れてよ」

北本先輩の背後から涼香ちゃんの怒った声がした。


「ごめんごめん。さ、我が家へどうぞ」

体をずらして、私を通してくれた北本先輩に苦笑いが漏れる。


「お兄ちゃんが家にいるなんて最悪」

涼香ちゃんはそう言ってぶすくれてる。

「涼香、そんなこと言わないのよ。神宮寺先生いらっしゃい。さぁ上がってくださいな」

涼香ちゃんを軽く叱責したあと、鏡花さんは私へと笑みを向けた。

「お邪魔します」

頭を下げてから、ご自宅へとお邪魔する。


「先生、早く部屋に行こう」

「うん。鏡花さん、失礼します」

「よろしくお願いします。後程お茶をお持ちしますね」


鏡花さんの笑顔に見送られて、涼香ちゃんに手を引かれ二階の彼女の部屋へ向かって歩き出す。


「千尋ちゃん、帰りは送っていくからね」

北本先輩はそう言って、ひらひらと手を振っていた。