「紀伊ちゃんは北本先輩が、本気だと思ってるの?」

私の中で最も不安要素であることを聞いた。


「そうね。だって、千尋にだけだもの、彼が本心を伝えるのは」

「私に好きって言ってるのも本心なの?」

「千尋は、恋愛に長いブランクがあるから、北本先輩の本気を感じられないのかも知れないわね。あれは本気の目じゃない」

そう言った紀伊ちゃんは、この街に来てから短期ではあるが何人か彼氏がいた。

紀伊ちゃんにとって優先順位の上位が私なので、それが理由に彼氏とは長く続かない。

迷惑かけてるなぁ・・・と心苦しいけど、紀伊ちゃんいわく『千尋を蔑ろにする男には用はない』らしい。


本当、紀伊ちゃんには色々とお世話になりすぎて、頭が上がんないよ。


「・・・北本先輩、遊びじゃなかったんだね」

「あんなにアプローチしてるのに、千尋に信じてもらえてない北本先輩が、ちょっと可哀想になったわ」

呆れたように肩を竦めた紀伊ちゃん。


「だって・・・大翔の事があってから、男の子って信じられなくて」

私を好きだと言ってた大翔が、その場の空気に流されて裏切っていたと知ったときは本当にショックだった。

男の子って浮気するものだって・・・思えてしまうし。

好きだと言う北本先輩の言葉の重みを受け止められないでいる。


「あいつはある意味初だったから、女にまんまと乗せられただけよ」 

「あ・・・うん」

それは分かってる。

あの時、大翔は彼女からの押せ押せのムードにたじたじしてた。

運命の人をやっと見つけた! なんて綺麗な子に言われたら、悪い気はしないだろうな。

客観的に考えられる今なら、大翔が一時の快楽に溺れちゃったのも分からなくもない。


まぁ、とは言え、浮気したことを正当化されても困るけど。


「ムカつくけど、今の北本先輩は千尋にだけ誠実よ」

「・・・うん」

それは分かる。

一緒に遊んでも、北本先輩は手を繋ぐ事以外しないし、私をいつだって大切にしてくれてる。


「千尋は、何を怖がってるの?」

紀伊ちゃんには心の中を見すかされてるなぁ。


「北本先輩を信じて、裏切られるのが怖い」

「そっか」

「うん。大翔みたいになったらと思うと・・・一歩引いてしまうの」

「絶対に北本先輩が浮気しないとは言い切れないけど。あのストーカー男が千尋以外を見る確率はかなり、低いと思うわよ」

紀伊ちゃんはそう言って苦笑いした。

ストーカー男って・・・。