「そう? ほら、はいチーズ」
北本先輩に肩を抱かれて正面を向かされた。
画面には撮影のカウントダウンが表示されていて、あ! と思ってるうちにシャッター音が鳴る。
それから連続で何枚か撮影されて、画面に表示された。
そこに写ってるのは驚いた顔、少し笑った顔、ちょっとだけ困惑してる顔。
隣には満面の笑みで、北本先輩が写ってた。
顔を寄せあってカップルみたいな二人に、なんだか恥ずかしい気持ちになった。
「フレームはどれにしようかな。千尋ちゃんも選ぼ」
「分かんないんで、お願いします」
「了解」
手慣れた操作で色々決めていく北本先輩。
凄く楽しそうな彼。
私はプリクラなんて撮った事が無かったので、色々と新鮮に思えた。
「落書きは外でするんだよ」
機械の指示にしたがって二人で外に出て、今度はタッチペンで装飾していく。
「へぇ、こんな風にするんですね」
感心したように言った私に、
「もしかして、プリクラ初めて?」
と驚いたように聞いた北本先輩。
「はぁ、ま・・・そうですね」
蒼空とはこんなのする前に別れちゃったし、紀伊ちゃんはプリクラなんて撮る子じゃないし。
プリクラをする機会は無かった。
「やった。千尋ちゃんの初めてゲットだな」
大きな声でそんな事を言うから、周囲にいた人達が驚いたようにこちらを見た。
「ちょっと、北本先輩、何言ってるんですか!」
「だって、嬉しかったから」
しゅんとした表情はムカつくぐらいカッコ可愛かった。
く、くそぉ、イケメンはどんな顔をしても様になる。
「凄い美形のカップル」
「なんか良いよね」
「私もあんなカッコいい彼氏欲しい」
近くにいた女子高生達がこちらを見て、キャッキャと騒いでる。
恥ずかしすぎる。
本当、どうしたらいいのよ、これ。
赤くなる顔を止められ無かった。
北本先輩は、見られなれてるのかこれと言って表情は変わらない。
「はい、出来たよ。こっちは千尋ちゃんの」
北本先輩は出来上がったプリクラを、近くにあったハサミで二つに切って手渡してくれる。
「あ、ありがとうございます」
「いいえ。さ、次いこ」
満足そうな顔でそう言った北本先輩は、プリクラ片手に移動を始める。
もちろん私の手を引くことは忘れない。
さりげなくやってのける北本先輩に、こっちはドキドキしてくると言うのに。



