「待ち合わせませんよ」

巻き込まれてムカついたので、冷たく返した。


「一緒に帰るって約束したよね」

「そんな約束いつしたんですか!」

女の子達が来たことで、話は流れてたと思いますけど。


「みんなの意見が一致しただろ? 最近の千尋ちゃんはナンパされやすいって」

ね? 紀伊ちゃんへと話を振った北本先輩。


「まぁ、あながち間違ってないわね」

「紀伊ちゃ~ん・・・」

どっちの味方なのぉ。

恨めしげに紀伊ちゃんを見つめたら、

「だって、変なのに寄り付かれるよりは、今の北本先輩の方が幾らかは安心だもの」

とあっさり言われた。

変なのって、なに?

道を聞かれてるだけって言ったのに。


「まぁ、そう言うことで約束決定。カテキョまでのデートは送り迎えする俺へのご褒美ね」

「そんなの要らないと思います」

勝手に送り迎えされて、ご褒美をあげなきゃいけないなんて、理不尽だ。


「あんた達なんなのよ。梨子もう行きましょう。こんな連中相手に出来ないわ」

こちらをしっかりと睨み付けた後、北本先輩に告白した女の子の腕を引いて去っていく女の子に、目を丸くする。


そっちから声をかけてきたのに、その言い草は無いんじゃないかなぁ。

これこそ、本当の理不尽だね。


「ごめんね? 嫌な思いさせて」

眉を下げて謝った北本先輩が苦笑いした。


「あ・・・別にいいですけど。出来れば今度は巻き込まないでくれると嬉しいです」

変な敵は全くいらないから。


「出来るだけそうするね」

北本先輩、笑い方が胡散臭いですよ。


「でもよ、さっきの子って今までにないタイプだよな」

渋沢先輩が、彼女達が去っていった方向を見ながら言う。


「先輩達の周囲には居ないタイプの女の子だったわよね。どちらかと言えば千尋タイプだもの」

紀伊ちゃんはうんうんと頷く。


「倫が千尋ちゃんを追いかけてるのを見て、自分でもいけるんじゃね? とか思ったのかねぇ」

渋沢先輩のその声は呆れを含んでいる。


「バカだよね。千尋ちゃんじゃなきゃ意味ないのに」

さらりとそんな事を言う北本先輩に、なんだか照れ臭くなった。


この人は、どこまで本気で言ってるんだろう。

本当、よく分からない人だ。


私に向かって優しく微笑む北本先輩を見ながら、そんな事を思った。