「梨子の話を聞くぐらい良いじゃないよ」

付き添っていたもう一人の女の子が北本先輩に向かって言う。

「はぁ・・・ねぇ? 食事中だって見て分からない? 食事を中断してまで話を聞かなきゃいけないのかな」

大袈裟な溜め息をついてそう言った北本先輩の声は低い。


「・・・っ」

痛いところを疲れたらしい女の子は悔しそうに下唇を噛み締めた。


「俺達にもプライベートってあるんだよ。ご飯ぐらいゆっくり食べたいんだけど」

今度は声をかけてきた女の子に向かって言った。

北本先輩の言うことは、確かにもっともだよね。


「ごめんね。出直してくる」

勢いよく頭を下げた女の子。


「いいよ、ここで言って。後から来られても面倒だから」

北本先輩ってこんな冷たい顔も出来るんだ。


「・・・っ、で、でも・・・」

今にも泣き出しそうな女の子は、居心地悪そうに俯いた。


「そんな言い方無いじゃない

憤慨したお友達が北本先輩を睨み付けた。


「へぇ、自分達の主張ばかりを言うなんて、女の子ってやっぱり恐いね」

笑ってるのに渋沢先輩の声は冷たい。


私と紀伊ちゃんは居心地悪くて目を合わせた。

変な場面に付き合わされてるなぁ。


さっさと食べて退散したい。

目の前のAランチに集中する。

気になってしまうので、チラ見は許して欲しいな。



「そ、そんな訳じゃないけど」

バツが悪そうに目を伏せた。


「で、用はなんなの?」

北本先輩が痺れを切らしたように言う。


「あの・・・好きです」

顔を真っ赤にさせた女の子が小さな声でそう言った途端に、


「そう、ありがとう」

と北本先輩が返した途端に、女の子の目はハリを取り戻した。

何かを期待するかのような、そんな感じ。


少しだけ、胸の奥がモヤモヤした。

その理由は分からない。


「でも、俺は千景ちゃんが好きだから」

ちょ、ちょっと北本先輩、こっち見ないで。

巻き込まれるじゃないですか。


「えっ?」

明かな落胆をした女の子。


「じゃあ、話は終わりだよね。ねぇ、千尋ちゃん、それで待ち合わせだけど・・・」

もう終わりだと言わんばかりに、彼女から私へと話しかけた北本先輩。


・・・二人の女の子から睨まれたじゃないですか!

北本先輩が余計なことをするから