カフェの席についても、私達の座る席は注目の的だった。
北本先輩と渋沢先輩、紀伊ちゃんと言う美形が集まったら、視線も集めるとは思うけど、かなり居心地が悪い。
最近、私もチラチラ見られて物好きが居るもんだと思ってしまう。
「しっかし、変われば変わるもんだよな」
北本先輩の隣に座る渋沢先輩がまじまじと見てくる。
「不躾なことすんなよ」
北本先輩が不機嫌に渋沢先輩の顔を掌で押す。
「ひょ、ひょっと、やめろ」
「煩いよ。とにかく見るな、減る」
睨み付けたまま、渋沢先輩の顔から手を離す。
「お前って、結構、心狭いのな」
「どうとでも言えば。さぁ、バカは放っておいて食べようね」
北本先輩は私に向かって微笑んだ。
「倫がそう来るなら、紀伊ちゃんは、俺と食べようぜ」
「巻き込まないでくれる」
寂しそうな振りをした渋沢先輩は、紀伊ちゃんに袖にされる。
うん、仕方ないよね。
そんなバタバタ劇を繰り返した後、食事を開始する。
「午後からは講義は一つだけ?」
そう聞いてきたのは北本先輩。
「あ、そうですね」
どうして知ってるの?
「ある意味ストーカーね」
紀伊ちゃんは呆れ顔で北本先輩を見ながら海老フライをかじる。
「人聞き悪いなぁ」
と言いつつもなぜだか嬉しそう北本先輩。
「人って変われるのな、色んな意味で」
渋沢先輩にそう言われた北本先輩は、
「良い方に変わるなら問題ないし」
と胸を張る。
「まぁ、頑張れば。一人に絞るなんて俺は到底出来ないけどね」
「お前にもいつか分かる日が来るさ」
二人のやり取りに、紀伊ちゃんは、
「この前まで、五十歩百歩だったのにね」
と嫌みを言った。
「話を戻すけど、今日は涼香のカテキョの日でしょ?」
「あ、はい、そうですね」
「だったらさ、カテキョの時間までデートしようよ」
「へっ?」
突然の申し出に目を丸める。
「だから、デート。一緒に家に帰れるし一石二鳥だよ」
「・・・・・」
そう言うのは一石二鳥とは言わない気がする。
「千尋ちゃんを夕方に一人で歩かせるより、俺と一緒の方が安心だしね」
「今までもそうだったし、別に問題はないかと」
危ない事なんて無かったし。
道を聞かれたり、誰かと間違われて声をかけられたことは何度かあるけど。