「紀伊ちゃん、今まで心配かけてごめんね」

私の方へと体ごと向いた千尋。

視力が低いせいで、少し目を細めているものの、千尋は昔と変わらない可愛い笑みを浮かべていた。


「ううん。何言ってんのよ」

涙を拭って微笑み返す。



「うん、やっぱり可愛いね。千尋ちゃんは美少女だ」

北本先輩の言葉に千尋は苦笑いを浮かべる。


「そんなに誉めても何も出ませんよ」

「何もいらないよ。本当の事を言っただけだから」

極上の微笑みを浮かべる。

照れ臭そうに目を伏せる千尋を微笑ましそうに見つめる彼の瞳は、本気で千尋が好きだと語ってた。


はぁ・・・女ったらしが本気になったら、きっと厄介だわ。

私の心配をよそに二人がとてもお似合いに見えるようで、周囲の女の子達から小さい悲鳴が上がってる。


「ねぇ、千尋、私もそれ読んでいい?」

何て書かれているのか、気になるし。


「うん」

頷いた千尋が雑誌を開いたまま私の方へと寄せる。


「ありがと」

それを受け取って雑誌へと目を落とす。



『今までの貴女より、更に素敵な女の子になるために、ありのままの自分を受け入れて。そうすれば、貴女に新しい出会いが巡ってくるかも』

よくこんな占い見つけてきたものね。

北本先輩を見上げると、軽くウインクされた。


きっとこの人は、千尋の事だけを考えて、この占いを探したに違いない。


「今回は感謝しするけど、簡単に北本先輩を信用した訳じゃないからね」

苦し紛れにそんな事を言ってみる。


だって、悔しいじゃない。

私が出来なかった事を、この人がやってのけたって事がね。


だから、千尋の親友としては簡単には認めてあげない。

千尋の気持ちだってあるんだもの。


「ククク、もちろん分かってるよ。これからの俺を見ててよ」

北本先輩は、チラリと千尋に視線を向けてから、私に真っ直ぐな目を向けた。


「ねぇ、二人ともどうしたの?」

不思議そうに私達を交互に見た千尋には、きっと私達の表情まで見えてない。


「一先ず北本先輩に感謝したのよ」

「その感謝を受け取ってたんだ」

私の言葉に、北本先輩が頷いた。


「そっか。北本先輩には、本当に色々とお世話になったもんね」

そう笑う千尋はまだ彼に恋心を抱いてない。

せいぜい、苦労すれば良いわ。

千尋はまだ恋愛に興味なさそうだもの。


したり顔で北本先輩を見てやったのに、彼は意味深に微笑んだだけだった。



ーendー