どうやって、この場を納めたらいいんだろうか。

大翔に無理やり手を引かれてこんな所まで来てしまった。

パンケーキ屋に残してきた涼香ちゃんの事を気になるし。


早く解放してもらわないと。


パンケーキ屋で、涼香ちゃんとお茶をしていたら大翔が突然現れた。

どうしてこの街のあの場所に現れたのかは、分からない。

だけど、気持ちだけが焦った。


私の気持ちはまだ大翔に会う準備が出来てなかったんだよ。


別れた頃より大人っぽくなった大翔は背が高くなって、色気を醸し出したイケメンになってた。

昔の面影の残る瞳で私を捉えた大翔は、話がしたいと私を連れ出した。


涼香ちゃんを残していけないといった私に、すぐ終わるからと言ったはずなのに、話もせずに未だに歩いてる。


掴まれた手が気持ち悪い。

あの子に触れたその手で掴まれてると思うと、鳥肌が立ってくる。


本当、やだ。

もう、逃げ出したい。


「離して」

「・・・・・」

「こんなことしてどうするつもり?」

必死に声をかけても大翔は何も言わない。


今さら私をどうしようと言うんだろう。

大翔と居る空間が苦しくて仕方ないと言うのに。


紀伊ちゃん、助けて。

心が悲鳴を上げる。


すれ違う人達は痴話喧嘩だと思っているのか、助けてくれそうにない。

強い力で掴まれた腕が痛いのに。


大翔の手を振り払って、逃げ出せない非力な自分が憎らしい。




「千尋、見つけた」

ホッとした様な声と、背中から覆い被さるようにして私のお腹に腕を回した誰か。


「えっ?」

と振り向くと、額に汗を滲ませた北本先輩の姿。


「誰だよ? お前」

大翔は突然現れた北本先輩に怒りを露にする。


「悪いけど。俺の彼女に触れるの止めてくれる?」

北本先輩は、大翔を睨み返しながら私の手を掴む大翔の腕を力一杯掴んだ。


「・・・っ、何するんだよ?」

痛みに私の手を離して、大翔は憎々しげに言う。


「それはこっちの台詞だ。女の子の腕に手形が付くぐらい握るなんて何してるんだ」

初めて見る黒い北本先輩。

相当怒ってるらしい彼は、冷たく大翔を見据えた。

それと、同時に私を背中から両腕を巻き付けて抱き締めた。

 
それを見た大翔の顔が歪む。