ー倫太郎sideー
「やっぱり、涼香のカテキョは千尋ちゃんだったんだな」
独り言を漏らす。
千尋ちゃんの素顔を見てから、どこかで見かけた事があるような気がしてて。
ふっと思い出したのが、前に自宅近くですれ違った美少女。
うちの家に近かったし、涼香や鏡花さんが言ってた特長に似てたし。
もしかしたら・・・と思ったんだよな。
今日、カテキョと出掛けるんだと嬉しさに涼香が漏らしてくれたおかげで、確認が取れた。
俺が起きてたら、家まで迎えに来ない様な事も言ってたから、何度も確認しに来た涼香を寝たふりしてやり過ごした。
ごめんな? 涼香。
悪いお兄ちゃんで・・・クククと笑った。
涼香と千尋ちゃんが、家から遠ざかったのを確認して窓から離れる。
手早く着替えて、一階へと向かった。
「おはよう、鏡花さん」
玄関先にいた鏡花さんに声をかける。
「あら、倫太郎さん起きてたの?」
驚いた顔で振り返った鏡花さん。
「うん。起きてちゃ不味かったかな?」
と苦笑いしたら、
「・・・そんな事はないんだけど。先生のこと見てしまった?」
伺うように俺を見た。
もちろん、嘘をつくつもりはない。
「うん、バッチリ」
OKサインを指で作った。
「・・・そ、そう。涼香には、内緒にしてね」
あの子は怒るだろうからと付け足した鏡花さんに、
「分かってるよ。でも、まさか千尋ちゃんだとは思わなかったなぁ」
と笑う。
「神宮寺先生とお知り合い?」
目を丸めた鏡花。
「後輩だしね。たまに話すよ」
俺が一方的にだけど、嘘じゃない。
「そうなの」
あからさまにホッとした鏡花さんに、俺は肩を竦める。
この人も、千尋ちゃんにとって俺は危険人物だと思われてるらしいな。
「じゃ、俺も準備したら出掛けるね」
早く追いかけないと彼女達が遠ざかっちゃうし。
鏡花さんの返事を聞かずに俺は洗面所に向かった。