「ところで、ご褒美にどこに行くのか決まったの?」

北本先輩の妹にせがまれたらしい。

「う~ん、小学生の行きたい所とか良くわかんないんだよね。だから、街をぶらぶらしてみようかと」

「まぁ、気になったものがあったら、途中でお店に立ち寄ったりしたら楽しいかもね」

「だよね? 涼香ちゃんを楽しませてあげたいし」

普段からなついてくる涼香ちゃんが、妹みたいで可愛いって言ってるもんね。

あの北本先輩からは想像も出来ないぐらい素直でいい子みたいだし。


それに、千尋と北本先輩を会わないように気を付けてくれてる所も好感が持てるのよね。


「千尋と一緒ってだけで、きっと喜ぶわよ」

「フフフ、だったら良いけど」

絶対に喜ぶに決まってるわよ。

美少女で、優しい千尋とデート出来るんだもの。


私もこうやって、千尋と二人でお茶出来るのは楽しい。

自然と顔だって、緩んじゃうわ。




「二人して美味しそうなもの食べてるね」

耳障りの悪い声に、

「・・・チッと」

舌打ちをして視線を移動させる。

そこにいたのは案の定、渋沢先輩と北本先輩。


周囲の席の女の子達が騒がしくなる。

キャーッと上がる黄色い悲鳴に、さっきまでの機嫌の良さが急降下していく。


前の席に座る千尋を見たら、凄く嫌そうな顔になってた。

うん、そうよね。

せっかくの楽しい時間が台無しだ。

さっさと追い返さなきゃ、と思ったのに、北本先輩は何を思ったのか千尋の隣の席に座り出した。


「ちょ、ちょっとなに座ってるんですか!」

声が低くなったのは仕方ない。


千尋だって、許可もなく隣に座った北本先輩に目を見開いてる。


「良いじゃん、一緒にお茶しようぜ」

「勝手に座らないでください、渋沢先輩」

まぁまぁと言いながら、隣に座った渋沢先輩を睨んだ。



「お茶しようって、何も持ってないじゃないですか」

この店はレジでお金を払って商品を受けとるスタイル。

テーブルについたからと言って、何か運ばれてくるわけでもない。


「お、忘れてた」

白々しくそう言った渋沢先輩に合わせるように、

「そうだな」

と頷いた北本先輩。