ロックオンしたその子は、俺を誘うように薄く唇を開けて妖艶に微笑む。
よし、この後の予定は決まった。
「一番胸のあるお姉さまじゃん」
慧は軽い笑い声をたてる。
「女は胸でしょ」
早く会話を切り上げたくて、思ってもいない事を口にする。
「だよなぁ~じゃあ、俺もお姉さまを物色してくるわ」
慧が立ち上がって女の子達の方へいけば、俺に合図を送ってきた女の子が入れ替わりにこちらにやってきた。
「倫太郎君だっけ? 隣いい」
「ええ、どうぞ」
女受けのする笑みを浮かべて頷いた。
彼女が隣に座った瞬間に、匂いのきつい香水が漂った。
「里美(リミ)よ。よろしくね」
「はい」
「この後、二人で抜けましょうよ」
大きな胸を俺の腕にベッタリと寄せる里美。
俺を見る彼女の目は捕食者の目だな。
背筋がぞわりとした。
千尋ちゃんみたいに澄んでない。
あ~もう、俺どうしたの?
さっきから、千尋ちゃんの事ばっかり引き合いに出してるよ。
「いいですよ。楽しませてくれるんですか?」
「もちろん」
里美は色っぽく笑う。
この人は、相当自分に自信を持ってるんだろうな。
だったら、楽しませてくれよな。
俺のこのモヤモヤを吹き飛ばすぐらいにね。
「それは楽しみだ」
自信たっぷりに口角を上げた。
里美の胸が当たった腕に鳥肌が立ってたって言うのにね。
俺と里美は、予定通り二次会には行かずに二人で近くのラブホテルに向かった。
出せばすっきりした気分になると思っていたのに、それは間違いで。
彼女のテクニックをもっても、俺の気分は浮上せず。
1度だけ相手をしてやって、早々と別れた。
里美と遊ぶ前よりも、気分が最悪になった事だけは言っておく。
俺・・・マジで、どうしたんだろうな?
端々で思い出す千尋ちゃんの事。
らしくない自分に肩を落として家路についたのだった。
ーendー



