マジか・・・本気でヤバイな。

何人もの女の子と遊んできた百戦錬磨の俺が、一瞬で彼女に心をわしづかまれた。


恋なんて、人を思う気持ちなんて、儚くて無駄なものだと思ってきたのに。



「幻想だろ」

悪あがきのように口にする。

だけど、ドキドキとした胸は治まることはなかった。



このままじゃダメだ。

誰か適当に掴まえて遊ぶしかない。

そしてたら、こんな気持ちなんて消し飛ぶはずだ。

自分に言い聞かせて、彼女とは反対方向へと足早に向かった。















「どうした? そんなぼんやりして」

遊び相手を探してる時に掛かってきた慧の電話で急遽コンパに参加した。


俺の登場に女の子達が色めき立って、愛想よく接してくるのに、まったく触手が動かない。

こんなこと初めてだ。


「別に、ちょっと疲れてんのかも」

隣に座ってきた慧に、誤魔化すように苦笑いした。


「マジかよ。今日は綺麗な看護師のお姉さまが選り取りみどりだってのに」

慧が大袈裟に嘆いた振りをする。


「煩いよ。適当に遊ぶからほっといてくれ」

テーブルに置かれたジントニックを煽った。


「つれないねぇ。ほらほら。お姉さま達が我先にと話しかけたそうにしてるぞ」

「・・・・・」

慧の視線の先の女の子達は瞳をキラキラさせて俺を見てた。

ひらりと手を振ってやれば、キャーと黄色い悲鳴を上げる。


この子達はこんなにも簡単に俺に釣られてくれるのに、千尋ちゃんには効かないんだよな。

そう思い付いて、首を左右に振った。


違う違う、彼女の事なんて、なんとも思ってない。

この子達の誰か一人と遊べば、不必要な感情は消えてなくなるはずだ。


どの子にしようかな。

あと腐れなく遊べる子がいい。


一夜の遊びに、本気を持ち出す子はごめんだからな。


「おっ、やる気になったか?」

女の子を物色し始めた俺に、慧が楽しそうに笑う。


「慧はどの子狙ってんの?」

被るのは避けたい。


「そうだなぁ~俺は簡単に股を開いてくれる子ならどの子でもいい」

おいおい、彼女達に聞こえたらどうするんだよ。


「じゃあ、俺は・・・・・黒いカーディガンを着た子」

派手な化粧で俺に欲情した瞳を向けてる女の子を誘うように見た。